すえつぐ動物病院のはじまり

はじめに

introduction

このページについて

すえつぐ動物病院が今日に至るまでに築いてきた医療の考え方は、一つの出来事や、明確な転機によって形づくられたものではなく、獣医師として現場に立ち続ける中で、目の前の命にどう向き合うかを考え、判断し、迷い、また考える。
その繰り返しの中で、少しずつ輪郭を持ってきたものです。

さらに、病院が成長し、共に医療に向き合う仲間が増えていくにつれ、それぞれが同じ方向を向き、同じ質で医療に向かうための「軸」が必要になっていきました。

このページでは、すえつぐ動物病院の医療思想が、会長、末次 由和のどのような経験と積み重ねの中から形づくられ、どのように共有されてきたのかを振り返ります。

一人の獣医師の歩みであると同時に、現在のチーム医療につながる背景として、お読みいただければ幸いです。

末次 由和

私が幼い頃、心に強く残った風景があるんですよ。
振り返ると、命と向き合う感覚の原点は、その“風景”だったように思います。 末次 由和 談

その2「原点の風景」2026年4月23日公開

原点の風景

The origin of the landscape

命と向き合う感覚のはじまり

その風景を思い出すとき、今でも、胸の奥が静かに動くのを感じます。

何かを学ぼうとしたわけでも、将来を意識していたわけでもない。
ただ、目の前にある命の在り方に、強く惹きつけられていました。

言葉にできないまま、「こういう生き方があるのだ」と、心のどこかに残っていったのだと思います。


幼い頃、自然の中で生きる「 牛 」の姿に、強く心を惹かれていました。

高原の澄んだ空気の中、悠々と歩き、草を噛みしめるその姿は、人の都合に左右されず、命そのものとして存在しているように見えました。

初めて、大自然に放牧された牛を目にしたときの、感動と言いますか、憧れにも似たような思いは、今も、昨日のことのように覚えています。

「あぁ、牛はいいなぁ」

物事に動じず、命として、まっすぐに生きている。
ゆっくりと悠々と歩き、草を食むその姿が、幼い私には、とてもあたたかく映りました。
敢えていま言葉にするなら、ひどく愛おしかった。

やがて、「牧場をやりたい」と思うようになり、そのためには、牛を診られるようになる必要があると考えました。

そうして、獣医師を志すようになったのです。

命と向き合う感覚のはじまり
命と向き合う感覚のはじまり
山へのドライブ中、自然好きな両親がシャクナゲやサザンカを眺める横で、私も花は好きでありながら、心はもっぱら牛の姿に奪われていました。

その3「現場で培われた胆力」2026年5月31日公開

現場で培われた胆力

Courage cultivated on the job

恐れず、逃げず、現場に立ち続ける力

獣医師となり、酪農の現場で牛を診る日々が始まりました。

往診、出産、急変対応。
昼夜を問わず、命の現場に呼ばれる毎日でした。

牛の診療は体力勝負です。
睡眠が取れないまま現場に向かうことも、決して珍しいことではありませんでした。

それでも、目の前の命から目を背けるという選択肢は、一度もありませんでした。

この時期に身についたのは、判断の速さや技術以上に、重圧の中でも動じず、逃げず、現場に立ち続ける胆力でした。

自分自身がどのような過酷な状況にあったとしても、その時にできる最善を尽くす。

この姿勢が、その後の獣医師人生の基盤となっていきました。

恐れず、逃げず、現場に立ち続ける力
1982年30歳当時

その4「小動物医療への転換」2026年7月3日公開

小動物医療への転換

Shift to small animal medicine

ひとつの決断が、小動物の生涯を診る医療へつながった

牛の診療に全力で向き合う日々が続く一方で、昼夜を問わず現場に立ち続ける中、日々の積み重ねが体に残るようになり、年齢を重ねるにつれ「この働き方を、この先も続けられるだろうか」そんな思いが、自然と心に浮かぶようになりました。

体力への不安は、後ろ向きな理由ではありませんでした。
自分自身のこれからを、真剣に考え始めた結果だったと思います。

また、若い頃に思い描いていた「牧場をやる」という夢についても、現実的に考える時期が訪れていました。
牧場経営には莫大な費用がかかり、命を預かる責任と体力に加えて、経営そのものを背負う覚悟が必要になります。
牛の診療に十分に向き合ってきたからこそ、その重みを、身をもって理解するようになっていたのです。

もともと、独立心は強く持っていました。
いつかは自分の判断で医療を行い、自分の責任で命と向き合いたい。
その想いは、獣医師を志した当初から変わっていません。

そこに重なったのが、小さな動物一頭一頭と、そのご家族に、より深く向き合う小動物医療への関心でした。

「今度は、小動物の生涯を診たい」

そう考え、「すえつぐ動物病院」 の開院を決意しました。

開院当初、入り口にて。向かって右から現総務部長の妻 容子、当時飼っていたラブラドール、私、左側手前が長女で当院獣医の朋子。
開院当初、入り口にて。
向かって右から現総務部長の妻 容子、当時飼っていたラブラドール、私、左側手前が長女で当院獣医の朋子。

その5「診療哲学」2026年8月1日公開

診療哲学

Medical philosophy

病気ではなく、飼い主様と動物を診る

開院当初から、変わらず大切にしてきた考え方があります。
それは、病気だけを見るのではなく、飼い主様と動物を診ることです。

検査ありきの医療ではなく、視診・触診・問診を通じて、今、何が起きているのかを丁寧に読み取る。
そして、飼い主様の思いを尊重しながら、治療の選択肢を共有し、共に決めていく。

医療が一方通行にならないことを、何より大切にしてきました。

2015年10月22日、診察・飼い主様への説明の様子
2015年10月22日、診察・飼い主様への説明の様子

その6「コンセプトに辿り着くまで」2026年9月2日公開

コンセプトに辿り着くまで

Until we arrive at the concept

“心を鋭く察し、攻めの医療を貫く”

これまで歩んできた獣医師としての経験の中で、大切にしてきた医療の姿勢は、常に自分の中にありました。
現場で何を見て、何を感じ、どう判断し、どう行動するのか。
それらは、言葉にせずとも自然と身についていた感覚でした。

しかし、病院が成長し、共に医療に向き合うスタッフが増えていく中で、一つの考えがはっきりと形を持ち始めました。

自分が長年の現場経験の中で培ってきた医療の姿勢を、言葉として共有することができれば、チーム医療は、さらに高いレベルで実現できるのではないか。

動物医療の現場には、飼い主様の言葉の奥にある心情、言葉を持たない動物のわずかな変化、呼吸、歩き方、毛並み、触診での反応など、見逃せば通り過ぎてしまう情報が数多くあります。

それらを丁寧にすくい上げ、飼い主様と動物、双方の思いが満たされる「針の穴のような、小さな一点」を見極めること。
そこを診療の原点とすることを、チーム全体で共有したいと強く感じました。

そして、その一点、原因の根幹を見極めたのなら、必要最低限で、しかし最適な医療を選び取る。

そのために、全員が同じ方向を向き、考え、もがき、具体的に行動することが求められます。

そうした思考と行動の積み重ねの先に、自然と残った言葉が、「心を鋭く察し、攻めの医療を貫く」でした。

この言葉は、誰かを鼓舞するための標語ではなく、理想を掲げた言葉でもありません。
歩んできた医療を、チームの軸として共有するために辿り着いた、診療の共通言語です。

2015年制定のコンセプト。私への幾度とない取材を通じ、株式会社プレアの香川さんが言語化してくれたもの。
2015年制定のコンセプト。私への幾度とない取材を通じ、株式会社プレアの香川さんが言語化してくれたもの。

その7 - 最終章「次の世代へ」につづく…

つづきは2026年10月公開予定です。